農薬を使うかどうか、肥料に何を使うか、機械を使うのか、
大規模化できるか、野菜の大きさ、食味を指標に
慣行農法、自然農法、有機栽培、炭素循環農法(無農薬・無肥料栽培)を比較してみました。
目次
◼︎自然農法法と有機栽培と炭素循環農法(無農薬・無肥料栽培)の比較
◼︎慣行農法について
◼︎自然農法について
◼︎有機栽培について
◼︎炭素循環農法について
◼︎まとめ
◼︎自然農法と有機栽培と炭素循環農法(無農薬・無肥料栽培)の比較
農法 | 農薬 | 肥料 | 機械 | 大規模化 | 野菜の大きさ※ | 野菜の食味※ |
---|---|---|---|---|---|---|
慣行農法 | 使用 | 化学肥料 | 使用 | 可能 | 標準 | 標準 |
有機栽培 | 原則不使用 | 有機肥料 | 使用 | 可能 | 同等 | バラツキあり |
自然農法法 | 不使用 | 不使用 | 不使用 | 不可 | 小さい | 非常によい |
炭素循環農法 | 不使用 | 不使用 | 使用 | 可能 | 同等以上 | 非常によい |
※ 慣行農法を基準に比較しています。
自然農法でも米ぬかで肥料を補うこともありますし、
炭素循環農法の炭素資材を軽く醗酵させるときに米ぬかなどを使うこともあります。
また家庭菜園など小規模であれば機械を使わないこともありますし、
大きさや食味についても個体差はあると思います。
ですが概ね上記のような理解と考えてよいでしょう。
◼︎慣行農法について
- 農薬ー使用
- 肥料ー化学肥料
- 機械ー大規模になる程機械化
- 大規模化ー大規模化可能
- 野菜の大きさー標準
- 野菜の食味ー標準
オーガニック野菜が1%に満たない日本では、
スーパーやコンビニ、食料品店などで
販売・調理されている米・野菜・果物のほとんどが
慣行農法で栽培されています。
1940年−60年ごろ、
グリーン革命、あるいは緑の革命と呼ばれ、
化学肥料や農薬による虫の防除や除草剤により収量があがり、
作業が軽減され効率的に栽培できるようになりました。
現在の慣行栽培はこのグリーン革命の延長線上にあり
F1種の種や遺伝子組み換えもこのグリーン革命の延長線上にあります。
効率化、収量増、食味向上を目指して日々改良されています。
◼︎自然農法について
- 農薬ー不使用
- 肥料ー不使用
- 機械ー不使用
- 大規模化ー不可
- 野菜の大きさー小さい
- 野菜の食味ー非常に良い
自然農法は「わら一本の革命」の著者である福岡正信さんが提唱したのが始まりです。
耕さない、除草しない、肥料を与えない、農薬を使用しない栽培方法です
その後、岡田茂吉さんや自然農の川口由一さん、
自然栽培の木村秋則さんが教え広めています。
若い世代では、自然菜園の竹内 孝功さんの講座は
とても人気があるようです。
現在、自然農法をされている菜園家たちは
最初だけ細かく土をほぐしたり
肥料不足なら米ぬかを撒いたりと
圃場や植物に合わせて
自分なりの栽培方法に改良されています。
「雑草、虫を敵とみなさない」「虫が食う野菜は虫の餌」
元気であれば人が病気にならないように、
野菜も丈夫に育てれば虫はつくことはありません。
そのため農薬は必要ない。
虫がつくのは、元気のない野菜と言われています。
雑草を刈っては敷いてを繰り返す
雑草を刈っては敷いてを繰り返すと
そこに腐葉土が作られます。
また微生物の集まりができ
土が団粒家され豊かな土壌になっていきます。
そのため肥料を施す必要がありませんが、
草が分解された腐食層は1cm程度しかありませんので、
肥料不足の感は否めません。
そのため、野菜は大きく育ちにくいですが、
小さい身体に栄養素を蓄えるため
とても美味しい野菜が育ちます。
機械化・大規模化は難しい
自然農法は雑草を刈っては敷いてを繰り返すため
機械化するのが難しいです。
またコンパニオンプランツを植えて
植物通し助け合い、補い合うように混色するため
一株一株ていねいに育てる必要があります。
そのため機械化、大規模農業化は難しい栽培方法です。
◼︎有機栽培について
- 農薬ー不使用
- 肥料ー有機肥料
- 機械ー大規模になる程機械化
- 大規模化ー大規模化可能
- 野菜の大きさー慣行農法と同等
- 野菜の食味ー農家により様々
有機JAS認証を取得したものを有機野菜と呼びますが
ここでは有機肥料を使った栽培方法のこととします。
ちなみに、
調べていて驚いたのですが
有機JAS認証では使って良い農薬があります。
Q.有機栽培でも農薬を使うことができるのですか。
http://www.jcpa.or.jp/qa/a2_13.html
話がそれました。
有機栽培はふつう無農薬栽培です。
肥料は鶏糞、牛糞、米ぬかや油粕などの
有機肥料を使って栽培されます。
「自然由来のものを使って栽培したい。」
「安心・安全な野菜を食べて欲しい。」
そういう気持ちから有機農家を志す方が多いようです。
慣行農法との大きな違いは
農薬を使わない、有機肥料を使う
という点です。
農家さんによっては
なるべく石油由来のものを使わないよう
工夫されている方もいるようです。
ですが、
基本的に慣行農法と同様に
機械化、大規模農業化は可能な栽培方法です。
野菜の大きさについては慣行農法と同程度ですが
食味についてはばらつきがあるように感じます。
肥料の入れすぎによるエグミが主な原因じゃないかと思います。
家畜の餌等に含まれるビタミン剤や抗生物質が
排泄物に濃縮されるのではないか、
それを有機肥料に使うのは安全なのか。
あるいは大量施肥による硝酸態窒素の懸念もあり
一概に有機野菜が安心安全とは言えないのではないか
という意見もあります。
◼︎炭素循環農法について
- 農薬ー不使用
- 肥料ー不使用
- 機械ー大規模になる程機械化
- 大規模化ー大規模化可能
- 野菜の大きさー標準
- 野菜の食味ー非常に良い
炭素循環農法は
ブラジル在住の林幸美さんが提唱する
無農薬無肥料の栽培方法です。
炭素循環農法 百姓モドキの有機農法講座
http://tan.tobiiro.jp/etc/home.html
農薬も肥料も使わないという点で
自然農と近いのですが、
慣行農法と同様、
機械化、大規模農業化が可能な栽培方法です。
キノコ栽培の培土である廃菌床や
木材チップ、籾殻や落ち葉など
炭素率の高い資材を大量に畑に鋤きこんでいきます。
生命の循環農法
難しく言うと
炭素循環による栄養素の供給です。
ですが、
無農薬無肥料栽培を言い換えると
生命が循環する農法と言えるでしょう。
肥料を入れずに野菜が育つのは
以下のような循環がなりたっているからと考えられています。
炭素資材→糸状菌→細菌→窒素、リン、カリ、その他栄養素→野菜が吸収
- 炭素資材を餌とする糸状菌(微生物)が増える
- 糸状菌の排泄する物質を餌とし細菌が増える
- 細菌が窒素、リン、カリ等の栄養物質を排泄する
- 植物が栄養素を吸収する
炭素資材が存在すれば
常にこの循環が成り立つため
常に肥料分を供給し続けます。
そのためよく育ち
慣行農法よりも2倍の大きさに育つと言われています。
発酵土壌か腐敗土壌か
土壌が発酵しているか、それとも腐敗しているかで
植物の元気さが変わります。
腐った(腐敗した)土壌で育つ野菜は
良い影響を受けません。
結果、虫が集まるようになります。
逆に発酵していれば
野菜は元気に育ち虫の害を受けず
農薬を使う必要はなくなります。
大規模化に向いた栽培方法
炭素循環農法は大規模農業に向いた栽培方法です。
連作・単一栽培が可能だからです。
例えば、トマトやナスは連作に向かない野菜ですが、
炭素循環農法では連作でも栽培可能です。
その理由はここでは述べませんが、
連作できることで作業が軽減されます。
例えば連作障害を抑えるための
土壌消毒を行う必要がありませんし、
輪作や休耕で圃場に悩む必要がありません。
あくまで予想ですが
連作・単一栽培できるようになると
その野菜に必要な微生物叢ができあがり
収量が上がったり、病害虫に強くなったり
メリットが増えるのではないかと思います
◼︎まとめ
慣行農法、有機農法、自然農法、
そして炭素循環農法(無肥料無農薬栽培)を比較してきました。
個人的には
食味、収量、安全性、大規模農業化、コスト減、労力減と
「炭素循環農法しかないでしょ」
と一押しですが、
家庭菜園か、農業か
どんな圃場か
どんな農業資材が手に入るか
それによって栽培方法は変わってくると思いますし、
100人いれば100通りの栽培方法になると思います。
慣行農法、有機農法、自然農法、炭素循環農法と
どの栽培方法からも学ぶことはできます。
なによりも
『自然から学ぶ』、『植物から学ぶ』ことが
一番楽しい学びです。
お世話になります、教えていただきたいのですが廃菌床をつかってみたいときのこ屋さんに行っていただいたものがしいたけの廃菌床、それも堆積場に次から次に投入し十数年堆積しているとのこと、私は完熟しているからいいのもだと思い十数トン運んだのですが炭素循環農法というのを読んでいるうちにこれでいいのかなという疑問にぶつかりました、菌糸が活きていないとかえって害になってしまうのか、気になります細かなデータもわからずで申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
rojiya様、はじめまして。ワンベジの小川です。
rojiya様の廃菌床は十数年山積みだったとのこと。その廃菌床が完熟堆肥化していれば問題ないと思いますが、腐敗していた場合は作物に害があるかもしれません。
廃菌床を利用するのは、圃場に入れて菌糸の広がりが目で見やすい=菌の増殖を観察しやすいと言うこと。それと糸状菌が炭素資材(オガクズ)を分解して、その排泄物を細菌が分解して野菜の栄養素になると言う循環が進みやすいことが挙げられます。
でも完熟した有機物を入れたのであればそれもまた土中の微生物が分解を進め循環が進むので問題はないと思います。むしろ菌の少ない休耕地などは堆肥化した高炭素資材の方が微生物には分解しやすくて良いのではないかと思います。
もし腐敗気味の廃菌床を利用したのであれば明渠や暗渠、あるいは高畝にするなどして水はけをよくし、土中に空気を入れることで腐敗の害を減らせるのではないかと思います。