農業

農家さんの収入から農業を見ると

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老若男女含めていま農は注目されてきています。

ワンベジメンバーも30代、40代の男女ですし、
メジャーな雑誌やテレビなどでも取り上げられることも増えてきました。

1年ほど前、大規模農業やるぜ!と意気込んでいたのですが、
現状を調べるほどにむむむっ、、、となりました。

「ちょっと待て。農業で生活できるのか?」と。

そんな農業の収支や物流についてまとめてみました。

目次
・反(約1000㎡)あたりの売上は?
・農家さんの利益は?
・物流コストが高いのは仕方ない
・直売所の利益率
・宅配ボックスの利益率
・個人農家の戦略
・農業法人は大規模農業か環境制御栽培
・まとめ

・反(1000㎡)あたりの売上は?

作物によって反収(1反10m×100m)は異なりますが、
私(小川)がざっくり収益利益を計算するときは、

反あたり売上50万円。コスト5割。所得(手元に残るお金)25万円
で計算しています。

ただ作物によります。

例えば大根の反収は31万円、所得14万円ですが、
シシトウの反収は200万円、所得140万円になります。

これだけ見ると、「じゃぁ、シシトウやろう!」と思うのですが、

1反あたりの労働時間は
大根116時間に対して、シシトウ1,989時間になります。
1,989時間は一日8時間労働とすると約250日になります。

手間がかからないものは売値が安くなり、
手間がかかれば高価格になる傾向があります。

コストはと言うと、
1反あたり大根は17万円、ししとうは5万円です。

つまり
大根は手間がかからない分、肥料代などのコストがかかり、売値が安いということがわかります。

一方、シシトウはコストは低く抑えられるけど、手間がかかり高値で売れることがわかります。

<参考資料>
品目別経営統計平成19年 調査結果の概要

平成17年産 品目別経営統計

・農家さんの利益は?

農林水産省の食品流通段階別価格形成調査の資料を見ると
野菜の流通コストは平均して店頭価格の55%となっています。
集荷や卸売り、小売などの流通コストです。

コストを引いたものが農家さんの売上となり、それは小売価格の45%となります。

ただ、ここからさらに肥料代、機械代、燃料代、出荷費、人件費などが差し引かれます。
農家さんの生産コストを大雑把に5割とすると、利益は小売価格の約2割(22.5%)になります。

これは出荷できた野菜についてのコストですが、
実際栽培すると2割くらいは売れないB級,C級の野菜があります。

それらのコスト、ロスを考えると、
小売価格に対して実利益は18%程度になります。

白菜1個200円で売られていたとして
農家さんの所得(全てのコストを除く)は36円。

白菜を1万個育てて所得は36万円になります。
(白菜は1反(10m×100m)あたり5,250~1万株育てられます)

<参考資料>
食品流通段階別価格形成調査 H26 調査結果の概要

・物流コストが高いのは仕方ない

集荷や卸売り、小売に経費がかかるのは仕方がないことだと思っています。
ぼったくりすぎだ!とは思いません。

例えば宅配ボックスを車に乗って千葉から都内まで持っていけば
6000円以上かかります。

それを宅配業者さんにお願いすれば1000円程度で届けることができます。
市場出荷であればもっとコストを抑えられます。

また販売先を自分で開拓することを考えると、お金も時間も手間もかかります。
営業に回っているうちに雑草に覆われたり、野菜が大きくなりすぎたり、、、。

そう考えるといまの物流システムってすごいなって思うんです。

栽培する人(農家)はいい野菜を育て、
物流の人は鮮度の良いものを消費者に届け、
小売の人はよりよい品質のものを消費者にPRする。

すごいよね。すごいなって思うんです。

でも、農家からするとワジワジ(沖縄の方言)するのも事実。

宅配ボックスがわかりやすいのですが、
ボックス価格3,000円で送料1,000円だと
「えぇ〜(T ^ T)」って思うわけです。

3,000円のものが4,000円になっちゃうって
買っていただいた人に申し訳ないって思うわけです。

自分が生産者としても、消費者としても
「えぇ〜(T ^ T)」って思います。

でも、そこにイノベーションがあるんだと思うのです!

いま一押しはローカルフード・ローカルマーケット。
地産地消ともいいますが横文字にしてみた(笑)。

農家さんネットワークを作って
地元のスーパーや飲食店に直接卸せるようにする。

将来的にはそうなるだろうなと予想しています。
どこの県・地域が始めるかな。

・直売所の利益率

直売所の手数料は幅がありますが15〜20%が相場のようです。

となると農家さんの売上は85%〜80%になります。
市場の55%を比べるととても魅力的です!

ただ1箇所の直売所に全ての野菜を出荷できるわけではないので
複数の直売所に出荷する必要が出てきます。
直売所が近所に沢山あるわけではないので
あちこちに車で運ぶことになります。

また、夏であればトマト、きゅうり、ナスなどは他の農家さんも出荷するため
直売所では同じ品が溢れかえりますす。
家庭菜園家さんも出荷しているので、
価格競争でどんどん安値になり利益が減っていきます。

消費者としては安くて品質のよいお野菜はありがたいのですが、
プロの農家としてはちょっとねぇ、、、と。

そんな話を友人農家さんからよく聞きます。

・宅配ボックスの利益率

大地やオイシックスなど宅配ボックスを大規模にやられている会社さんもありますが、
ここでは個人経営の農家さんの宅配ボックスについてまとめます。

宅配ボックスは1ボックス3,500円、月に2回程度が多いようです。
中間マージンが抑えられるのでコスト3割とすると、1ボックス当たり利益が2,450円。

50家族×月2回の販売で月24万円の所得になります。

50ボックス分の詰め込み作業は結構な作業量ですが
家族経営の農家さんであれば週2回出荷(1回25ボックス)はありだと思います。

朝採りした野菜を午前中に出荷というのも早起きさんなら不可能ではありません。
クロネコヤマトさんは当日配達もできるようなので消費者さんに喜ばれます。
やっぱり採れたてが美味しいものね!

また加工所を作って加工食品を販売すれば
保存も少し伸びますし、利益率も高くなります。

それと、直接消費者さんとつながれる宅配ボックスは利益の面だけではなく、
「この人たちのために育てている」という実感がわき喜びも大きくなります。

そんな消費者へ直売を考えている方にオススメなのがこちらの本です。

西田 栄喜さんの著書「農で1200万円! ――「日本一小さい農家」が明かす「脱サラ農業」はじめの一歩」

加工食品や漬物教室など本当にあれこれと工夫されていますが、中でも3反で年収1200万円にビックリでした。

少ない土地で、少ない人出で、コストを抑えて、利益率を高める。
これから農家さんの一つの形になるんじゃないかと思います。

・個人農家の戦略

少ない土地で、少ない人出で、コストを抑えて、利益率を高めるには
前述の宅配ボックスやレストランやホテルとの直接契約、
あるいはイチゴやブルーベリーなどの観光農園も人気がありますし利益が良いようです。

あるいは他に栽培されていない珍しい野菜、果物を育てるというのも良いと思います。

例えばバニラビーンズとか、国産の胡椒とかレモンとか出荷量が少ないものは希少価値が上がります。

千葉の南房総みたいに狭小地ばかりの地域はなおさらそっち狙いがいいと思う。

圃場が狭くて温暖、だから南房は花卉栽培が盛んになった言われています。

・農業法人は大規模農業か環境制御栽培

農業生産の将来はどうなるのかを考えると、

大規模農業+自動化と、ハウスなどの環境制御栽培に注目が集まると予想しています。

大規模農業+自動化

農業をしようとするとトラクターや畝立て機、播種機、定植機、収穫機、洗浄機や、作物によって特別な機械が必要なこともあります。

また、それらの機械を保管する倉庫や収穫物の貯蔵庫なども必要になります。

それらを全て揃えるとなると数千万円〜数億円かかります。
「はぁ〜」とため息が出てしまいました(笑

ただ、いまは農家1軒ずつトラクターなど高額な機械を持っていますが、
これを法人で所有・管理するようにすれば随分とコストを抑えられるのではないかと思います。

また、自動運転カーのように農業機械も自動化されてきているので、
人手を減らし機械化していく傾向は早まっていくと予想しています。

「あそこの圃場耕しといて〜」とスマホをちゃかちゃかいじると自動的に作業してくれる。
AIが栽培管理するようになれば、必要な時に除草をし、追肥をし、収穫してくれる。

狭小圃場だとなかなか難しい面もあると思いますが、北海道のような大規模圃場ではとっても便利。

そんな未来は結構近いと思います。

無農薬・無肥料栽培のノウハウが確立されれば、低価格で高品質の野菜を栽培されることができます。

そう考えると未来は結構いいかもって思いませんか?

環境制御栽培

環境制御はオランダがとても進んでいます。

国土が狭い中で自給率をあげようとした結果、狭い面積で高収量をあげる環境制御技術が発展していったそうです。

オランダが救う世界の飢餓

日本でもこの環境制御技術が導入され始めていて、空調管理や二酸化炭素を供給することで収量をあげています。

環境制御によるトマト栽培で反収1,000万円という農家さんもいるそうです。

ただ設備の導入費が高額のためな気軽に始められないというネックがあります。

この設備導入費が抑えられるようになると、広がっていくのではないかと思っています。

・まとめ

農家さんの所得(利益)という面からまとめてきました。

数字で見ると農家さんの現状が垣間見えたのではないでしょうか。

それでも農に興味を持つ人が増えるでしょう。
それだけ魅力的ですし、本質的なことだから。

個人経営の農家さんと農業法人とでは規模の大きさから目指す方向性が異なります。

狭い土地で利益を最大にするのか、大規模に広げて薄利多売でいくのか。

消費者と直接繋がりたいのか。それとも卸し販売がいいのか。

農業に興味がある方は、どのような農業をしたいのか夢を描いてみましょう。
と同時に、農林水産省の統計情報などから農業の現状を調べてみましょう。

夢と現実を両手に持って進んでいけばきっと道は開けていきます。

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