農業

野菜の硝酸態窒素の安全性

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野菜を食べた時に
エグミを強く感じることがありませんか。
その理由は硝酸塩(硝酸態窒素)が多く含まれているからです。

食の安心安全を求める人が増えるに従って、
この硝酸塩(硝酸態窒素)による
身体への影響を心配する人が増えてきました。

硝酸態窒素による
メトヘモグロビン血症(ブルーベビー症候群)や
発ガン性のリスクがあるのではないかと。

化学的に裏付けのある説なのかわからなかったのですが
良い本を見つけました。

「硝酸塩は本当に危険か〜崩れた有害仮説と真実」
J.リロンデル、J-L.リロンデル著
https://www.amazon.co.jp/dp/4540063014

この本の中に、
ブルーベビー症候群や発ガン性について書かれていましたので
まとめてみました。

尚、化学や植物生理学の専門ではありませんので
間違いがありましたらご指摘をお願いします。

目次

・硝酸態窒素でブルーベビー症候群になるわけではない。
・硝酸態窒素が発ガン性物質なわけではない。
・それでも硝酸態窒素は少ない方がいい。
・有機栽培なら硝酸態窒素の心配はないのか?
・炭素循環農法は心配なし
・まとめ

・硝酸態窒素でブルーベビー症候群になるわけではない。

体内に還元酵素があれば
硝酸塩が亜硝酸塩になり
メトヘモグロビン血症になりますが、
体内で大量の還元酵素が作り出されるわけではないようです。

血液中のヘモグロビンは酸素とくっつき
酸素を体の隅々に運ぶ役割があります。

メトヘモグロビンは酸素がくっついた状態、
つまり酸化した状態です。

通常、赤血球の中で
酸化(メトヘモグロビン)と還元(ヘモグロビン)の状態が
繰り返されます。

このメトヘモグロビンの濃度が高くなり酸欠(チアノーゼ)になることを
メトヘモグロビン血症(ブルーベビー症候群)と言います。

チアノーゼになっても治療法があるので
死亡することはないそうです。

乳児はメトヘモグロビンをヘモグロビンへと還元する
還元酵素が十分に働きません。

生後6ヶ月以下、特に4ヶ月以内に
メトヘモグロビン血症になりやすいそうです。

このメトヘモグロビン血症の原因の一つに
亜硝酸塩があります。

硝酸塩は硝酸態窒素とも言いますが、
硝酸塩(NO3-)が還元したものを
亜硝酸塩(NO2-)といいます。

還元するには還元酵素が必要で、
微生物が作り出しています。

ここで問題なのは
「体内で還元酵素が生み出されるメカニズムが解明されていない」
ということです。

農林水産省のウェブサイトを見ても
そのメカニズムはまだ解明されていないようです。

農林水産省「硝酸塩の健康への影響」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/eikyo/

体内に還元酵素があれば
硝酸塩が亜硝酸塩になり
メトヘモグロビン血症になりますが、
体内で大量の還元酵素が作り出されるわけではないようです。

調べた範囲では、
硝酸塩を大量摂取→亜硝酸塩の増加
という明確な研究結果は出ていないようです。

硝酸態窒素が発ガン性物質なわけではない。

硝酸態窒素に発ガン性があるという説は
ニトロソアミン化合物と関係しています。

詳しい化学式は書きませんが、
硝酸塩(硝酸態窒素)→亜硝酸塩→ニトロソアミン化合物
という反応が体内でおこるそうです。

研究の結果、
このニトロソアミン化合物の中の1つ
ジメチルニトロソアミンに
発ガン性があるとわかりました。

硝酸態窒素に発ガン性があるのではなく
化学反応した結果、
発ガン性物質を生成するということです。

ここで問題になるのは
硝酸塩を摂取しなくても
ニトロソアミン化合物が生成されているのに、
癌になるほど大量のニトロソアミン化合物が
体内で生成されるのかということです。

硝酸態窒素でブルーベビー症候群になるわけではない。で書きましたが、
硝酸塩を摂取すれば
必ずしも亜硝酸塩になるわけではないため、
ニトロソアミン化合物になるのは
さらに少なくなると考えられます。

また全てのニトロソアミン化合物が
発ガン性ではないので
どれだけの発ガン性ニトロソアミン化合物が生成されるのか
”わからない”というのが現状のようです。

ちなみに「硝酸塩は本当に危険か」では
発ガン性はない理由をあれこれ述べていますが、
まだよくわからないんだなという印象を持ちました。

それでも硝酸態窒素は少ない方がいい。

「硝酸塩は本当に危険か」を読んで、
硝酸態窒素は悪者だ!
という考えはだいぶ無くなりました。

もしかしたら
硝酸態窒素はメトヘモグロビン血症や
発ガン性とは関係ないかもしれない。

でもまぁ、
化学的にはまだよくわからないんだな、
というところで落ち着いています。

それでも、硝酸態窒素は少ないほうがいい
と思います。

一番最初に書きましたが
硝酸態窒素が多いとエグミが強くなります。

つまり美味しくない。

美味しくないものは食べたくないですし、
農家さんとしては売れなくなります。

またもしかしたら健康被害があるかもしれない
と考えられているということは
それだけ敬遠される要素にもなります。

美味しいものを食べてもらうために、
自信を持って安心安全ですと言えるように、
硝酸態窒素濃度の少ない野菜を育てるのがよいでしょう。

有機栽培なら硝酸態窒素の心配はないのか?

硝酸態窒素の問題(メトヘモグロビン血症や発ガン性)は
化学肥料を使った農業への批判でした。

大きな野菜を育てようと
化学肥料をたくさん撒いた結果、
硝酸態窒素濃度が高くなったと。

しかし、
硝酸態窒素濃度は肥料の量と相関します。

化学肥料だろうと有機肥料だろうと
たくさん肥料(窒素)を供給すれば
硝酸態窒素濃度は高くなります。

有機肥料だからナチュラルで安心だと
たくさん撒いてしまうと
硝酸態窒素濃度が高くなってしまいます。

それに肥料を撒きすぎると
腐敗層ができるので
美味しい野菜が育ちません。

炭素循環農法は心配なし

肥料が多過ぎれば硝酸態窒素濃度が高くなり、
肥料が少なければ野菜はしっかり育ちません。

ではどれだけ施肥すれば良いのでしょう。

一般的には土壌分析によって
施肥する肥料の量を計算しています。

しかし、雨が降ったり
植物が吸収したり
微生物が分解・排泄することで
土中の成分は刻一刻と変化しています。

そのような状況で
施肥量を見積もるのは大変難しいものだと
想像できます。

炭素循環農法では、
この施肥量の計算を行う必要がありません。

植物が必要な栄養素を
微生物が供給し続けてくれるからです。

またバランスよく栄養素を供給してくれるので
野菜は大きく育ち
硝酸態窒素が過剰になることもありません。

炭素循環農法について
『炭素循環農法とは』にまとめてあります。

まとめ

硝酸態窒素の問題について
私(小川)の個人的な考えをまとめました。

・腸内細菌や外部環境によって硝酸態窒素が有害物質になる可能性はある。
・けれど過剰に心配する必要はないかもしれない。
・健康被害以前に硝酸態窒素が多い野菜は「まずい」。
・まずい野菜を消費者は買わない。
・化学肥料だろうと有機肥料だろうと入れ過ぎれば野菜の硝酸態窒素が増える。
・農家はできる限り硝酸態窒素が少ない野菜を育てた方が良い。
・それには炭素循環農法など無農薬無肥料栽培がいい。

コメント

  1. ピンバック: 有機栽培とは
  2. ピンバック: 炭素循環農法とは

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