Q&A

炭素循環農法 Q&A

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0.ご質問者様の今までの農法

・慣行農法で牛パーク堆肥、きのこ廃土菌床、化成肥料等投入
・ベトナム産の塩を散布し塩塾野菜に。
・土質は黒ぼく土、100aで人参・じゃがいも・ほうれん草・大根等を栽培
・長野県の標高約800-900mの圃場

水はけが良く、腐食も豊富な圃場なのかなぁと想像し羨ましい!そんな圃場が1ha!いいなぁ〜。

無農薬無肥料栽培を始める場合、うまく野菜が育つかやってみないとわからないことが多いです。水はけがよく適量の炭素資材を投入すれば野菜は育つと思っていますが、サイズが小さくなることは考えられますし、土の下層に腐敗層ができていれば虫害の可能性もあります。一気に炭素循環農法に切り替えずに半分あるいはそれ以下から始めるやり方もあります。今までの農法と炭素循環農法の圃場と比較すると気づきや学びがありますし、リスクも減らせます。ぜひ検討してみてください。

1. 10aあたり、炭素資材を圃場にどのくらいの量の炭素資材を撒いたらいいですか、時期はありますか(春と秋とか)

炭素資材を蒔く時期

炭素資材を撒く&耕運する時期は晩秋がオススメです。

好気性の菌は水に弱いため、春先に炭素資材を撒いて菌が増殖しても梅雨時期に圃場が水浸しになり菌が減少・死滅してしまいます。

その点、秋雨後から春先まで比較的雨が降らないため土壌が乾燥状態になり、菌が増殖し有機物の分解や土壌の団粒化が進みます。

炭素資材の撒く量

圃場の菌の量や土質(砂地、粘土等)によって加減が必要だと思いますが、 水はけがよく、ホトケノザやナズナが生えているような菌が豊富な圃場であれば10aあたり3トン(圃場の土が見えなくなる程度)を目処に入れて大丈夫です。 ススキやセイタカアワダチソウなどが生えているやせ地では、菌が少ないため10aあたり1トン程度(全体的にうっすらと土が見える程度)に抑えた方がよいでしょう。 また、籾殻や廃菌床ではなく、ススキやセイタカアワダチソウ、緑肥のソルゴーなどが枯れかかって来た頃にハンマーナイフモアで粉砕、耕運すると菌が一気に増殖します。ハンマーナイフモアがあるのであれば、このやり方が一番おすすめです。 撒く前に特に意識した方がいいのは水はけです。プラソイラーやサブソイラーでの耕盤層の破砕、あるいは明渠や暗渠など、兎にも角にも水が抜けるよう工夫することが大切です。水が抜けない圃場では、菌が増えても大雨で何日も水浸しになれば菌は死滅してしまいます。

2. 何年くらいたてば無農薬・無化学肥料に近ずきますか

何年で無農薬・無肥料で野菜が育つかということであれば3年が一つの目安だと思います。

ですが、一年目から順調に育っている農家さんもいらっしゃいます。

こちら↓の圃場見学でご紹介していますが、

GranjaRuralさんは、休耕田から畑への転換1年目、ほぼ無肥料栽培で立派なニンジンを栽培されています。

成田市の池上さんも長野の森下さんも1年目から変わらず収穫できたそうです。

圃場見学させていただいて何よりも圃場の水はけを良くすること大事だと感じています。

3. 炭素資材で木チップ、きのこの廃菌床、もみを撒く予定ですが、偏りや多種を撒いた方がよろしいでしょうか

炭素率の違いにより、菌に早く分解される資材、ゆっくり分解される資材があります。

多種類の炭素資材を利用することで、初期〜中長期で菌のご飯を供給できるのでグッドアイディアだと思います。また、廃菌床と籾殻を撒いている圃場は籾殻の分解が早いようです。

廃菌床は糸状菌(キノコ菌)が回っているため、木チップや籾殻へと菌が広がりやすいため手に入るのでしたら利用をお勧めします。その際はなるべくフレッシュな廃菌床を使ってください。山積みになっている廃菌床だと中層・下層部が腐敗している場合があります。

4. 情報誌や講習会とかありましたら教えて下さい

情報誌は見たことはありませんが、たんじゅん広場さんとicas(イカス)さんのウェブサイトはお勧めです。

”たんじゅん広場”は炭素循環農法を日本で広めている城 雄二さんが主催し、実践農家さんたちの交流会が行われています。

たんじゅん広場
http://tanjun0.net/?page_id=79

icasさんは炭素循環農法の講座を開催しています。いつか受講したい気持ちがあります。

icas
https://www.icas.jp.net/farm/

5. 通常の種子を播種する時や苗を植える時にはどのタイミングで有機物をしき、土と混合するしない や散水をしますか?およそのやり方を教えて下さい。

高炭素資材を散布+耕運直後に播種・定植が可能です。

失敗談として、、、炭素資材を大量に撒きすぎて土と混和できない=有機物マルチをした状態の場合、播種は難しいです。特に砂土や壌土ではなく水はけの悪い粘土質の土壌に大量に撒きすぎるとマルチ効果でその下の土が常にジメジメした状態になります。粘土質の場合はほどほどに撒きましょう。

炭素資材は播種機で播種できる程度の炭素資材を撒いた方が良いのかなぁというのが私の経験則です。圃場全体に撒いて所々土が見える状態からほぼ見えないくらいの量を撒くのがいいのが良いと思います。

散水についてですが直播の場合は散水はしていません。なるべく雨が降る前日を選んで播種していますし、雨が降ったら発芽するくらいで考えています。

播種後の炭素資材の投入と時期は?

6-1. 高炭素資材を散布+耕運5-10cmくらいして直後に播種して散水発芽のち木チップ(おが粉)をしこうかと思いますが、播種後すぐに木チップしいてもよろしいでしょうか?発芽に水分と光が必要かと思いますのでどのタイミングでどのくらい散水と木チップしいたらいいでしょうか

6-2. 当地は木材会社やきのこ工場もあり、木チップやきのこの廃土菌床はたくさん入手可能です栽培収穫は12月末までですが、高炭素資材を散布は秋9月頃と冬12月(越冬野菜で3月収穫)に予定してますがよろしいでしょうか

播種後におがくずを撒く、あるいは高炭素資材を撒くのはマルチの代わりでしょうか?

高炭素資材をマルチに利用する場合、菌の餌→野菜の栄養素としての効果はあまりありませんが、砂土であれば保水の効果が高まると思いますし、次作の菌の餌→野菜の栄養素として速やかに利用されると思います。

高炭素資材を撒くのは土中の微生物の餌としてなので、撒いた後に耕運が基本です。それが野菜の栄養素、保水力、保肥力、団粒化アップにつながるからです。
 
高炭素資材の秋まきをオススメしたのは、高炭素資材を散布後に耕運→春野菜・夏野菜まで菌を増殖、土壌の物理性、肥沃度を上げてから野菜の播種・定植という意味合いからです。
 
高炭素資材を秋まき耕運してすぐ良品野菜が採れるかはちょっとわかりかねますが、前作に施肥した残肥があるのでちゃんと育つのかなぁという気持ちもあります。
 
とはいえ、やってみないとわかりません(ゴメンなさい
 
もうお読みになっているかもしれませんが、炭素循環農法の提唱者 林さんのWEBサイトは読み返す度に勉強になりますし、やってみるとここはどうなんだろと思うところも出て来るかもしれません。

http://tan.tobiiro.jp/etc/home.html

7.昨日から木チップを敷いてますが古く水分を多く含んだものと新しい切りたての軽いチップがありますがどちらのほうがいいでしょうか?

水分を含んでいても乾いていてもOKです。1年ほど野積みした状態であれば菌の食いがいいですしフレッシュなチップであればゆっくり時間をかけて分解されていきます。

ちなみにチップは針葉樹ではなく広葉樹ですか? 針葉樹は広葉樹に比べて分解されるまでに時間がかかります。

8.軽トラで圃場に散布してますが、軽トラで踏みつけないほうがいいでしょうか?

軽トラで踏みつけても耕運すれば問題ありません。また微生物が増殖することで土壌がフカフカしてきます。

9.本日、きのこの廃菌床を1年以上野積みしたところから掘りだすとカブトムシの幼虫がたくさん出てきましたが散布しました。合わせて木チップもしき耕起しました。きのこの廃菌床は野積みしたものや腐敗したものは不可ですか?雨にあたらないようにしてからか、きのこの廃菌床は集めたらすぐにしくべきでしょうか(菌が生きてますか)

キノコのよい香りがすればキノコ菌は生きていますし、発酵が進むと森のような良い香りがします。

匂いを嗅いで食べられれそうかどうかで発酵と腐敗の違を判断できると思います。美味しそうな香りと鼻につく腐敗臭の違いというのでしょうか。
 
廃菌床が腐敗したものを利用する場合、腐敗したものをそのまますき込むと良い影響はないと思いますが、天日にあてて乾燥させて菌を死滅させてしまえば高炭素資材として利用できると思いますが、できるだけフレッシュな廃菌床を選ばれることをお勧めします。
 
これから(6月以降)雨が多くなる時期なので炭素資材が水浸しにならないように、圃場の水はけに気をつけてください。

除草について

10-1. 土手や通路の草は除草剤は使用せず刈り機で処理ですか?黒マルチシートを土手にしく予定ですがいかがでしょうか

10-2. 4月3日に木チップしき、4月8日に播種した圃場ですが草が少々出てますが、草刈でカット、再度木チップしき耕起したほうが良いですか今後夏草が心配ですが、対応策何かありましたら教えて下さい

中耕を兼ねて通路を耕運することもありますし、草刈り機で除草することもあります。
 
土手に黒マルチや防草シートを利用するのは草刈りの手間が省けていいですね。
 
畝の草は野菜の生育を邪魔しない程度であれば草を生やしたままにしていますが、草に負けそうであれば除草しています。

京人参のGranjaRuralさんは草が生えていても除草していなかったはず。それよりも人参の生育が旺盛なら問題ないというお考えだと思います。

4月8日播種の圃場は必要であれば草刈りで手助けして様子を見ても良いのかなと思います。

11. 4月8日播種の人参・大根ですが大根は発芽良好、一部虫害あります、害虫は何か対応策ありますか?

  虫害・病気についてですが無農薬・無肥料栽培の場合、発生したら打つ手がありません。。。 「虫に食われる野菜は虫のエサ。虫が寄ってこない土作りをしましょう。」 というのが無農薬・無肥料栽培の考えのようです。。。
 
ですが、今の時期は虫が多いですし多少の虫食いは問題はないと思います。 12.人参は発芽悪いです、散水を抑えました、以前シーダー種子で播種してる情報をいただきましたが、今後シーダー種子で播種してみようと思いますが、散水等のポイントありましたら教えて下さい シーダー種子は保水がよくなるよう種子をコーティングしているため、雨が降れば自然に発根・発芽するそうです。以前土がかかってないシーダー種子が発根しているのを見ました。
 
ただ無農薬無肥料栽培の場合、発根から発芽までの時間が長く、「発芽に失敗したかな?」と不安になるそうです。気長に待ってみてください。

13. 現在の高温対応に関して

13-1. 約10日雨なし、ここ3日は30℃超えで、平年より5℃は高いです。生育は良好ですが、例年7日くらい雨がないと散水してましたがいかがでしょうか

土が団粒化していると毛細管現象で地下水を上部に吸い上げるため、常に野菜に必要な水分が供給されます。

地表から10〜20cm程度の土をギュッと握って、つついてポロポロと崩れるくらいの湿り気があれば野菜に必要な水分はあると思います。

逆に深さ10cmの土が完全に乾いている(砂ならサラサラ、粘土質ならガチガチ)状態であれば団粒化が進んでいないので散水した方が良いです

心配もおありだと思いますし、今後の経験知アップのために散水区と、無施水区と比較するのもありかも。

13-2.液肥や塩(ベトナム産の海塩=旨みを引き出すため)の散布はいかがでしょうか

植物は窒素・リン・カリなど”無機態”栄養素を根から吸収し、植物体内でアミノ酸やタンパク質に変換させて枝葉を作ったりエネルギーにしています(以下勝手にNPKサイクルと呼びます)。そのため窒素・リン・カリを施肥するというのが今の植物学の基本です。

ですが、無施肥の場合(NPKがない、あるいは少ない場合)、有機体栄養素(アミノ酸やタンパク質)を吸収し、体内でそのままアミノ酸・タンパク質として利用している(以下、勝手にアミノ酸サイクルと呼びます)という研究結果が出ています。アミノ酸・タンパク質を吸収した野菜は葉肉も厚く虫害や病気になりにくいそうです。

液肥や塩を散布した場合、このアミノ酸サイクルを阻害する可能性はあるかもしれません。

液肥や塩を散布しなくても、生育状況がよいのであれば様子見でよいかと。少し小さいくなる可能性はありますが、味が濃く旨味のある野菜が育つのではないかと思っています。

こちらも散布区と無散布区と比較するのもありだと思います。

14.炭素資材(木チップ)を投入したところは草の発生が違う

ご質問者様からの情報によると、

炭素資材(木チップ)を投入したところは、草の発生が少ないです、点在してるような状態です。慣行の五分の一以下です。本日慣行のところ草びっしりでびっくりしたしだいです

とのことでした。

無農薬・木チップのみでとても立派な大根が収穫できました!

ご質問いただいていた信州浅間ファーム小林様からとてもりっぱな大根をいただきました!無農薬・木チップだけで育てたそうです。

全長30−40cm、直径10−15cm!

私が育てた野菜はこの半分程度。。。

小林様、素晴らしすぎです(星

以下、信州浅間ファーム小林様より頂いたメールとお返事メールをご紹介します。

+++ 小林様よりいただいたメール

無農薬、木チップだけで育てた大根です

他の圃場ですが、取組み1年目なので害虫やら草も発生してます。
当初の小川さんからのアドバイスで、全ての圃場でなく一部慣行も入れて取組みした事は正解でしたキチンと木チップを敷いたところはほとんど草がありません。来年は更に拡大してみようと思います

+++


+++小川より小林様へ返信メール

無肥料でこんなに立派に育つなんて本当に素晴らしいですね!

播種後、遅々として進まない生育に、
慣行農法なら農薬や肥料など手を加えることができますが
ほぼ放ったらかしの炭循農法だと手をかけることができず
モヤモヤした気持ちで見守られていたのではないでしょうか。

と同時に、自然に委ねる、信頼する、あるいは自然に全面降伏するというか
そういう気持ちも持って見守られてこられたのではないかなと。

頂いた大根を見てその努力と心労が報われたのかなと思い、
自分ごとのように嬉しいです。泣きそうなくらいです。
おめでとうございます。そして、ありがとうございます。
またお力になれることがあればおっしゃってくださいね。

草や虫食いが出た圃場と良好に育った圃場の違いについてですが、

土の中に違いがあるのかもしれません。

例えば耕盤層があるかないか、排水性の差、これまでの肥料の蓄積量の違いなど。

・圃場を掘ってみて硬い層が出てくる深さを比較する。
・表層から10cm・30cm・50cm・70cm、、、で土質・水分量・色・匂いの違いを比較する。
・土壌分析で残留肥料分の差を比較する

などで何か違いがわかるかもしれません。

+++

涙が出るくらい嬉しいご報告と大根でした(涙

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